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商店街を歩いて感じる事
所要があって、生まれ育った山口県は宇部市に行ってきました。古い市役所は人がいっぱいでしたが、そんな庁舎も建て替える事になり、最新の公共施設に生まれ変わるようです。この街に一つの大きな変化が来ようとしています。
写真は市役所のお向かいに建つ、村野藤吾設計の旧山口銀行。宇部市の建築を語るなら村野藤吾の建築を語るも同じではないかという程宇部市にゆかりのある建築家です。現在はミュージアムとして再利用しているようです。既存部分に新しく増築されていましたが、この増築部分が、既存との関係性を全く無視したガルバリウム鋼板の外壁が張られていました。非常に残念でした。せめて宇部市民会館だけは余計なことはしてほしくないないと生意気にも考えてしまいます。
ついでに近くに昔からある商店街もぶらり。人はほとんどおらず、お店も閉まっている所が多かったですが、そんな中でもアートの展示やワークショップ等、新しい試みがあり、街づくりに対して地元の方の思いを感じとる事ができました。宇部市は僕の生まれ育った街という事もあるせいか、宇部市を離れて長い事もあってか、さびれている街並みに立つとどうしたら良いだろうかと考えてしまいます。これは宇部市だけの事ではないですが、この商店街の街づくりには活気づけようとする活動はあるが、それを受け入れる「建築」がありませんでした。と言いながらこういった古い街並みを再生する時に「建築」に何ができるでしょうか。せいぜい古い建物をリノベーションするぐらいではないでしょうか。建築家はこの現状でどうすべきでしょうか。自問自答をしてしまいます。経済の観点で考えれば、この場所をすべて撤去して最新のショッピングモールを誘致するのも一つの方法ですが、この商店街は宇部市の栄枯盛衰を表してる大切な場所だと思います。「文化」を宇部市は大切に考えている中で、既存を活かす事が求められそうですが、そうすると建築はリノベーションしかなくなる。ということで、視点を変えてみて「減築」することで新たな場所を創造できないかという結論に行きつきました。商店街全体のバランスを見ながら減築することにより新しい空間、「場」を創出し、既存建物との関係性を生みながら様々な活動を受け入れる器として商店街の役割を担うようにすることで、今までにない面白い場所ができそうな気がします。宇部市は芸術の街なのでいっそ商店街全てを美術館やワークショップの場にできたら絶対面白いな。なんて一人妄想を膨らませます。商店街を歩いてこんな事を考えるのはやっぱり生まれ育った所だからでしょうか。今は住宅が中心の活動ですが、やがては街づくりを考えるような事もやってみたいものです。